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フリーランスのライターを食い物にする悪徳編集プロダクションから学んだこと

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フリーランスの収益源はさまざま。細かな金額のお仕事を積み上げるスタイルもあれば、まとまった金額をガツンガツンとこなしていくスタイルもあるでしょう。

今回は、比較的大きな金額を伴うお仕事を引き受けた結果、相手先企業の条件がよくなく、苦労してしまったフリーライターさん(nakamotoさん、36歳、男性)のリアルな体験談をお届けします。


それは、2週間で50万円の雑誌編集の仕事だった

私がフリーライターとして活動してきた中で、もっとも大きかった仕事の金額は50万円です。
仕事内容は「まるごと一冊◯◯◯◯本(仮の雑誌名)」という本を作ることでした。この本は広告以外の編集ページが58あり、制作スタッフは編集兼ライターが私を含めて5人、デザイナーが2人という陣営。作業期間は約2週間と、もう少し時間が欲しいかなと思うくらいの日程で、きつくはないが余裕もないスケジュールでした。

記事制作、デザイン、入稿作業などの制作に関わるほとんどの業務は、出版元にこの企画を持ち込んだある編集プロダクションが一手に任されていました。私は出版社に5年務めたあと、この編集プロダクションに3年間在籍していたので、作業の流れなどはすべて把握していました。この編集プロダクションにしてみれば、即戦力というよりも主力になれる私に仕事を依頼したほうが楽だったのです。

この依頼が来た時、私はフリーライター転身を機に生まれ故郷に戻って2年目でした。地方にいながらフリーとしてやっていく厳しさをちょうど痛感していた時期だったので、条件などを細かく詰める前に仕事を受けました。しかし、これが失敗の始まりだったのです。

条件は決められずに作業量がどんどん増えていく

最初の打ち合わせで、先方に「ページ単価はおいおい決めるとして」と前置きされたので、報酬金額の話はこの時点では決まっていませんでした。ただ、私が受けたこのジャンルの仕事では、ラフ制作、記事執筆、校正などもろもろ含めたページ単価の相場が約1万円だったので、大体のギャラは想像できていました。

その時の打ち合わせでは「取材はすべて終わっているし、写真素材や資料なども揃っているから、君なら余裕でしょ?」「全部で20ページくらい担当してくれればいいから」などと、簡単な情報を聞かされただけでした。

制作開始予定日の前日、私のもとに写真素材や資料が送られてきました。どこから手を付ければいいか確認の電話をすると「まず台割表を作ってくれませんか?」と言われたのです。これには本当に驚きました。台割表とは書籍類の設計図のようなものです。これが決まっていないと、動きようがありません。仕方がないので、すべての資料に目を通し、丸1日かけて台割表を作りました。
翌日、担当ページを決めるために連絡すると、今度は「実は会社の編集スタッフは経験がほとんどないので、指導しながら制作してくれませんか」と言われたのです。最初の打ち合わせでは「動ける編集スタッフが4人いる」と聞かされていたので、頭数については心配していなかったのですが、この話を聞いた瞬間、私は絶望しました。なぜなら、実質的に「1人で本を作ってくれ」と言われたのと同じことだからです。

1人で58ページ分の編集をフィニッシュまでやり切る

この時点で2日経過していたので、間に合わせるためには文句を言っている暇はありません。ひとまず、自分が担当する範囲を30ページに広げ、他の4人には残りの28ページを担当してもらうことにしました。その時に、先方のスタッフが作った紙面を校正・指導するために「ラフと記事を”早めに”送ってください」とだけ伝え、私は突貫作業に取り掛かりました。

6日後、私は自分が担当するページを作り終え、あとは取材先のチェックと校正を残すのみとなっていました。その間、先方のスタッフから記事はおろかラフさえも送られてきていませんでしたが、自分の作業を優先したかったため、見て見ぬふりをしていました。手が空いたので「どうなっていますか?」と確認の電話を入れると、まだ誰もできていないとのこと。
これは私の想像通りでした。素人に「紙面を作れ」と言っても、簡単に作れるほど雑誌の編集は簡単ではありません。ここから私の2回目の突貫作業が始まりました。スタッフたちに指導している時間はないので、先方のスタッフには誰でもできる雑用をお願いして、私は必死にレイアウトと記事を書き上げました。この間、表紙の見出し、レイアウト、色校正などもすべて自分が担当しました。

編集プロ社長からは、いきなり難癖をつけられて

印刷会社への入稿日は、月末31日の金曜日。残すは出来上がった紙面を取材先に急いでチェックしてもらうだけとなっていました。しかし、急なお願いだったこともあり、取材先からの返答は月曜日になることに。印刷会社と交渉した結果、残ったページのみ月曜日の入稿となり、週明けの2日には無事に入稿が終わりました。
その一週間後、出来上がった雑誌が家に送られてきました。「よく2週間で作ったなぁ」とページをめくりながら、大変だった作業を思い出して感慨にふけりました。それと同時に、先方の詐欺にも似た対応に腹が立ってきました。これはそれなりの報酬をいただかないと納得できないと思い、報酬の確認の電話を入れました。
先方は小さな編集プロダクションで、お金に関する権限はすべて社長が握っていました。その社長に冒頭で「うちのスタッフが紙面制作の指導を受けていないと言っている」と、いきなり難癖を付けられたのです。時間がなかったことを説明したのですが、「それも込みで仕事をお願いした」と取り付くシマもありません。なによりも労いの言葉がないことに腹が立ちました。
結局、取材や写真撮影は先方がすべて行なったことと、スタッフへの指導がなかったということで「50万円」という金額で決着しました。私としては58ページ分の制作費、台割表作成費、表紙制作費を考えると「65万円」前後で考えていました。予想よりもかなり安い報酬となってしまいましたが、それでも「2週間で50万稼いだ」と思うと、なぜか納得してしまう自分がいました。

結局、振り込み予定日が2度遅れることに

報酬の支払い予定日は翌月の10日と伝えられていました。当日、ドキドキしながらネットバンクの画面を開くと報酬が振り込まれていません。何かの手違いで遅れているのかなと思いましたが、3営業日経っても振り込みがありません。支払い催促の電話をすることに気は引けましたが、思い切って電話すると「入稿日が月末だったのに、翌月の週明けに入稿が完了したから、支払いも一ヶ月遅れる」と言われました。支払日が変更になるなら、「連絡の一本くらいあってもいいのに」と先方に対し不信感が募りました。

支払いが不安だったので、先輩ライターにこの編集プロダクションについて聞くと「値切られる」「支払いが遅れる」など、悪い評判しか出てきません。ここに務めていた時は気づきませんでしたが、外注のライターさんにそういう風に思われていたのかと思うと、なんだか悲しくなりました。
翌月、この編集プロダクションから振り込みはありましたが予定日より3日遅れた上に「振込手数料の432円」は報酬のなかから引かれていました。釈然としませんでしたが、この会社とは二度と取引することはないので、文句も言いませんでした。そして、これからは作業の内容や報酬額の契約書を交わしたうえで、フリーの仕事をしていこうと心に決めました。

─nakamotoさん(36歳、男性)


受注金額が大きいとそれだけでテンションが上がってしまいますが、契約の条件や支払い詳細など、細かな所も気を抜かずに取り組みたいですね。自分の身は自分で守るしかないフリーランスとして、不誠実な企業にも気をつけたいものです。